今月のコラム
2012/02/01

【場 所】JR東日本 桜木町駅
 横浜と絹の深いつながり

 シルクロード。
 その交易路で、殊に珍重された、柔らかくしなやかで魅惑の輝きの絹織物。
 東の終着地である日本では、すでに弥生時代には養蚕の技術が伝来し、一通りの生産が始まっていました。
 長い間、献上品として生産され、ごく一部の人しか手にすることが出来ませんでしたが、江戸時代に転機が訪れました。
 町人の文化の華やぎと、幕府以下諸藩の財政再建の思惑とが見事に合致し、その生産性を高めて行きました。品質も紡織技術も向上し、錦や羽二重、ちりめん、粋好みにはお召しに紬、と多くの絹織物が生まれました。
 江戸に近い各地で生産された繭は、群馬や信州などに集められ、それらがまた八王子宿に一挙に集積され、甲州街道を上って江戸に送られるという形で、流通のための基盤も整備されて行きました。
 1908年には、生糸を横浜港に運搬する目的で、現在の横浜線の元となる民間鉄道「横浜鉄道」が開業し、絹は国の殖産を担う基幹産業へと成長を続けることになっていったのです。
 貨客船氷川丸などにもシルク専用のシルクルームが設けられ、多くの絹が外貨獲得のため横浜港から旅立っていきました。

 最盛期には4万戸を超えた神奈川県内の養蚕業ですが、国の助成金の打ち切りを受けて、2010年には県内すべての業者が廃業を決めました。
 とてもお世話になったのにお礼も言えなかった、後悔のような気持ちになります。

文/橋口